例1:市販のシクロデキストリン3種を混合して溶液調製しただけですが、その秤量、溶液調製、確認分析作業だけでも結構手間がかかります。

シクロデキストリンの3種混合溶液をLC-MS装置で分析することにより以下の状態がチェックできます。
  • リテンションタイムの異常より送液ポンプの状態
  • イオン源の状態(汚れ、イオン化強度)
  • 各ピークの分離具合からカラムの劣化チェック(ピーク形状、分離度、ピーク幅、リテンションタイム):シクロデキストリンは1Kを超える高分子にも関わらずODSカラムでシャープなピーク形状です。GPCカラムの評価にも使用可能です。
  • ピーク形状より、カラムのチャネリング
  • 検出器の目詰まり、故障や劣化による感度低下:ESI法のイオン化ではシクロデキストリン化合物のイオン化が弱いことが知られていて、この溶液を分析することで感度チェックに適しています。
  • ゴーストピークよりカラム、流路の汚れや溶離液の劣化、コンタミ等
  • 繰り返し分析(場合によっては検量線作成)により送液系の安定性、オートサンプラーの精度チェック

装置1(HPLC/ELSD検出器)

・感度、分離共に今回使用した装置の中では最高の結果でした。


装置2(LC-MS)

・MS感度が下がっています。TICクロマトグラムでは全くわかりません。
100倍以上に拡大したフィルタークロマトグラムでようやくわずかにシグナルが検出される程度で、γ体はほとんどわかりません。

・分離が良くありません:3本ともほぼ重なってしまっています。


装置3(LC-MS)

・MS感度は悪くありませんが、分離が不完全です。(α体とγ体が重なっています)
HPLCは4.6φ×25㎝(流速1.0ml/mim)、LC-MSは2.0φ×10㎝カラム(流速0.2ml/min)をそれぞれ使用しています。カラム劣化等ではなく、前者の方が高い分離性能という結論です。

・他2装置と比較して3分以上リテンションタイムが遅いので、送液系のトラブルやカラム劣化の可能性が考えられます。(この現象について装置メーカーにお問い合わせして確認頂いたのですが原因不明でした。再現性に問題がないことから、装置特性と理解するしかありませんでした。)